庵野さんはアジャイルでエヴァをつくっていた

4/29にNHK BS1で放送された「さようなら全てのエヴァンゲリオン庵野秀明の1214日〜」をみました。

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小学生の時に初めてエヴァンゲリオンを見たとき、まさか25年後も自分がエヴァンゲリオンを追いかけ続けているとは思っていませんでした。NHKで放送されたこのドキュメンタリーを見ていると、「これはまさにアジャイル開発ではないか!」と思えるようになってきました。本日は普段とは少し違った視点で、エヴァンゲリオンを見ていきたいと思います。

## シン・エヴァンゲリオン劇場版について

本題に入る前に、、

最新作である「シン・エヴァンゲリオン劇場版」についての感想を簡単に書いておきます(笑)。私自身、エヴァンゲリオンの解明できない謎に取りつかれ、小学生のころから様々な解説本を読みあさり、最近ではエヴァンゲリオンの謎に迫ろうとするさまざまなYouTube動画を見ていましたが、本作を見終わった時、それらの謎は実は本質的な問題ではなかったのではないかと思えるようになりました。劇場で配布されたパンフレットには、本作で出てきた"専門用語"が大量に記載されていましたが、それを見た時、実はこれらの言葉にはほとんど意味はないのだと庵野さんに諭されたような気がしたのです。また、ラストシーンを見終わった時、長い旅が終わった安堵感に包まれたのを覚えています。これは庵野さんの長い旅のゴールなのであり、一緒に旅をしてきた我々もまた、それぞれの"旅の終わり方"があって良いのだと感じました。ありがとうエヴァンゲリオン

## 庵野監督の映画のつくりかた

前置きがすこし長くなってしまいました(笑)昨日のドキュメンタリーを見るにつけ、エヴァンゲリオン最新作を生み出す庵野さんの姿勢にアジャイルを感じずにはいられなくなっていきました。(このような視点でエヴァを見ること自体、私自身の時の流れを強く感じます。)

## 絵コンテをつくらない

庵野さんは今回、アニメーションの設計図である絵コンテをつくることなく、スタジオに組まれたセットを使い、自由にカメラアングルを探るという手法で、カットを作成していきました。試行錯誤の中でよりよい作品の可能性を探って行こうとする姿は、まさにアジャイル開発そのものです。さらに、作り上げたプリヴィズ(=プロトタイプ)をスタジオスタッフに見てもらい、より観客に近い視点での意見をすくい上げていき、作品を修正していきます。これはアジャイルにおける"ふりかえり"そのものです。

## ギリギリまで現場のスタッフに任せる

もう1点印象的だったのが、庵野さんは制作に関わる多くの作業を現場のスタッフに任せているという点です。特にスタッフに何かを指示するわけでもなく、スタッフに何かを聞かれても「今はまだわからない」とだけ応える。。スタッフは困惑します。さらに庵野さんは、NHKのドキュメンタリースタッフに「スタッフが困惑している姿を撮影してほしい」と伝えます。一流のチームが悩みながら彼らのベストを尽くす姿にこそ、スタジオカラーの本質があると考えているようでした。実際に庵野さんはそれを、"肥大化した自己に対するアンチテーゼ"という言葉で表現していましたが、これはまさに自分のチームを信頼し、権限を与えることでより優れたものを生み出そうとするアジャイルの本質そのものでした。

## さいごに

もちろん庵野さんはアジャイルという言葉を知った上でこれらの行動とっているわけではないと思います。より良い作品(=バリュー)を生み出すためにはどうすればよいかを突き詰めて考えた結果として、アジャイルの本質を捉えた行動をとっているのです。普段ITコンサルの現場にいる私としても非常に興味深く、学びの多いドキュメンタリーでありました。