「データ分析人材になる。」をよみました

「データ分析人材になる。目指すは「ビジネストランスレーター」」を読みました。

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## データ分析で重要なのは「ビジネス力」

私自身もデジタル化支援チームとしてお客様のデータ活用を支援することが多いですが、データ分析の現場でひしひしとビジネス力の重要性を感じています。データ分析って面白いんですよね(笑)。次々と分析したいことが溢れてくる。なので、時間さえ与えられれば、永遠にデータ分析を続けることができます。でも、ここで一歩立ち止まることが必要です。「これが本当にお客様のビジネスの役に立っているのか?」

## 5Dフレームワーク

そこで本書の筆者らが、いままでの経験を踏まえて生み出したのが、「5Dフレームワーク」です。以下の5つの要素で構成されます。

  1. Demand(要求)
  2. Design(デザイン)
  3. Data(データ)
  4. Develop(開発)
  5. Deploy(提供)

私が特に大事だと思うのは1つめの「Demand(要求)」です。多くの分析プロジェクトが「Data(データ)」に飛びついて手当たり次第にデータ分析を始めてしまい、ビジネス部門から、「この分析って何の役にたつんだっけ?」と突き返されてしまうことが多いのではないでしょうか?分析の価値を提供するビジネス部門の話をじっくり聞くことで、ビジネス部門が抱えている課題を明確にし、今から分析チームが実施しようとしている分析結果が、ビジネス部門のバリューに繋がるのかを見極めることが非常に重要です。

## 事例が具体的で共感できる

本書にはたくさんの失敗エピソードと成功エピソードが出てきます。これがすごく良い。共感しまくりながら読み進めることができます。もし、データ分析の経験が少ない方でも、データ分析の現場ではこのようなことが起きているんだ、と脳内でプロジェクトをシミュレーションすることができると思います。

## 事件は現場で起きている!

データ分析のプロジェクトはアジャイル的です。ビジネス部門ですら自分たちの課題の本質を理解できていないことが多い。本書の中に登場するデータ分析者も本当によく現場に足を運んでいます。ビジネスの現場に足を運び、担当者と会話をしながら、ビジネスを観察することでビジネス上の課題に対する解像度を上げていき、具体的なデータ分析の問題に落とし込む。この一連のプロセスそのものが、"本当にビジネスの現場で役に立つ"データ分析には必要とされているのではないでしょうか?

## さいごに

世の中は空前のAIブームとなっていますが、地に足をつけてデータ分析を進めることの大切さを具体的に説いている良書であると思いました。私もあらためて、ビジネス現場に足を運んでみようと思った次第です。

「ユニコーン企業のひみつ」をよみました

4/26に発売された「ユニコーン企業のひみつ」を読みました。

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 ## 「ユニコーン企業ではスクラムをやっていない」

アメリカではアジャイル(主にスクラム)がソフトウェア開発の主流になっていて、Googleをはじめとするユニコーン企業はその一歩先に進んでいるとのこと。(日本においてはまだウォーターフォール開発が主流であり、アジャイル開発といっても納期やスコープがあらかじめ固定された、"なんちゃってアジャイル開発"が多い印象ですが。)アジャイルの一歩先ってなんなんだろう?(ワクワク)

## スクラムの一歩先は、大規模アジャイル

フレームワークだけをとらえると、ユニコーン企業で実施されているのはSAFeなどをはじめとする大規模アジャイルフレームワークそのものでした。もちろんSAFeなどのフレームワークと言葉の定義はちがう(例:トライブ=ART)けど、組織の構成は非常に似ている。結局アジャイルチームをスケールさせようとするとこういう形に落ちつくのか。(もちろん著者はこのフレームワークをコピーすれば旧来の大企業がテック企業になれるとは述べているわけではないので、注意。)

## 大規模アジャイルの難しさ 

アジャイルの教祖の一人であるRbert C. Martinはその著書「Clean Agile」の中で、大規模アジャイルについて、"アジャイルは小規模なソフトウェアチームの問題を解決したのであり、大きなチームを組織する際の問題はすでに5000年前に解決されているため、「大規模アジャイル」は存在しない"と記していますが、問題はそう簡単ではなさそう。本書の中でも、”スケーリングは手ごわい。スケールさせることは、プロダクトマーケットフィットを果たしたテック企業が直面する最大の課題のひとつだ。"と述べられています。

## 信頼され、権限が与えられた、自律的なチーム

これに尽きる。

え、そんなことなの?と思われるかもしれないですが、これを徹底的に実践できている日本企業を、私は知らない。チームは信頼され、権限が与えられることで初めて、自分のチームのミッションを定め、そのミッションを達成するために必要なタスクを考え抜くことができる。人に指示されたミッションじゃないから、アウトプットに愛着や責任感が芽生える。テック企業はどんなに開発がピンチに陥ろうとも、徹底的にチームを信じる。これを徹底できる企業が世界にどれだけあるだろうか。

## 明日からチームではじめよう!

経営層じゃないとこんなことできないじゃないか。。(そっ閉じ)

 いや、あなたが会社の経営層でなくてもできることはあるはず。仕事をしていると、チームメンバーに細かな指示を飛ばしたくなることもあるはず。私もある。そのほうが短期的には仕事が早く進む。でもそれを続けていると、指示されたこと以外何もしないチームが生まれてしまう。それを打開するためにマイクロマネージメント(以下、無限ループ)。そのループを断ち切るために、明日から自分のチームを信じてみよう。

## さいごに

スクラムを実践しようとすると、どうしてもフレームワークそのものに目が行きがちになりますが、それを下支えする文化が重要だとあらためて気づかされる1冊でした。また、SAFeをはじめとする大規模アジャイルに入門する前に、それらの概観をつかむ目的で読むのも良いのではないでしょうか?おすすめの1冊です。