アジャイルに関する書籍をまとめました

今年のゴールデンウィークアジャイルをテーマにしていくつかの本を読みましたので、まとめてみたいと思います。

## それぞれの書籍の関係性

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 いきなりですが、まとめ図です。大きく2つのブロックから構成されます。上部は開発で何を作るべきかをどう定めていくのか(=プロダクトバックログをどうつくるか?)を学べるブロック、下部はスクラムをはじめとするアジャイル開発方法論(=アプリをどうつくるか?)を学べるブロックであり、アジャイルチームの規模に応じてさらに2つのブロックに分かれています。

## どうつくるか?

小規模なチーム

単一チームでどのようにスクラム開発を実践していくかを学ぶためには「SCRUM BOOT CAMP THE BOOK」がおすすめです。スクラムマスターを引き受けることになった"ボクくん"を中心として、初めてチームがスクラム開発を進めるストーリーになっており、スクラム開発ってなに?おいしいの?状態の人が初めて手に取る本としてぴったりです。

大規模なチーム

10人以下の単独チームで実現できるシステムは小さいものとなるため、大きなシステムをつくるためにはチームをスケールさせなければなりません。そこで参考になるのが、「ユニコーン企業のひみつ」です。4月末に発売された本書は非常に話題になりました。いわゆる"Spotifyモデル"を解説したものです。Spotifyではスクラムチームをどのようにスケールさせていったのかが描かれており、単なるチーム構成を解説するだけでなく、チームを信頼した上でどう権限を委譲し、自律的なチームをつくるのか?など、SpotifyGoogleをはじめとする"テック企業"がどのように組織をつくっているのかを垣間見ることができます。ただし、これは執筆時点でのSpotifyにおける組織モデルを解説しているものにすぎず、現在もカイゼンされ続けていることに注意してください。(すなわち、組織をカイゼンし続ける文化にテック企業の本質があり、このモデルを模倣したからといって、エンタープライズ企業がテック企業に変身できるわけではないということです。)

## 何をつくるか?

スクラム開発を解説した本はそのほとんどが、どのような目的で、どのようなアプリケーションを作るかについてはすでに定まった前提で描かれています。しかし実際には、顧客の体験をどう変化させるかという、新たなユーザーストーリーを描く作業は非常に難しく、ステークホルダーが納得できるプロダクトバックログができた段階で、スクラム開発は7割終わった状態だと言ってしまっても過言ではありません。また、スクラム開発は適宜優先度の高いプロダクトバックログアイテム(=ユーザーストーリー)が差し込まれるため、開発されるアプリケーションの全体像を見通すことが難しいという難点もあります。まさにスクラムによるアプリケーション開発の要ともいえる、ユーザーストーリーの描き方を解説した本が、この「ユーザーストーリーマッピング」です。ドキュメントを使った"伝言ゲーム"を脱却し、ユーザーストーリーを軸として、ステークホルダー全員で"良質な会話"を行うことで、よりよいユーザーストーリーを創り出せると述べています。

## SAFe®︎との関係

大規模アジャイルフレームワークの中で最も普及率の高いSAFe®︎との関係性についても簡単に述べておきたいと思います。SAFe®︎は非常に汎用性の高いフレームワークであり、複数のスクラムチームを束ねてART(Agile Release Train)を構成し、PI Planningと呼ばれるイベントでARTを同期させながら、開発を進めていきます。このARTは「ユニコーン企業のひみつ」で紹介されているSpotifyモデルのトライブに相当します。また、SAFe®︎ではARTを組織する前に、Operational Value Streamを描くことで顧客のジャーニーマップを明確化しますが、これはまさに「ユーザーストーリーマッピング」におけるユーザーストーリーそのものです。このように、これらの書籍はそれぞれが、SAFe®︎の構成要素を深掘りしたものとしてとらえることもできるのです。SAFe®︎を学んでみたい(学んでいる)方が、それぞれの要素をより深く理解するために、これらの書籍を読んでみるのも良いかもしれません。

## さいごに

いかがでしたでしょうか?今回はいままで紹介してきた書籍の関係性を、SAFe®︎も交えながら解説してみました。それぞれの書籍の関係性を意識しながら読むことで、みなさまにも新たな発見があれば幸いです。

 

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